賃貸営業がすぐ辞める原因とは?高すぎるノルマとインセンティブ制度の改善策
賃貸営業を定着させるために見直す8つの課題
報酬制度を直しても、営業機会、教育、仕事量、求人の説明が変わらなければ、賃貸営業の離職は止まりません。高すぎる売上基準を中心に据えながら、周辺の仕組みを次の8項目で確認します。
1.インセンティブの計算方法が分かりにくい
「売上に応じて支給」とだけ説明し、何%か、いつ売上として計上するか、どの給与月へ反映するかが分からなければ、社員は成果が出ても収入を予測できません。キャンセル、値引き、法人契約、他の社員との共同接客、契約者と入居者が異なる場合など、現場で起きる例外も曖昧になりやすい点です。
売上別の給与シミュレーションを3〜5パターン用意し、通常案件と例外案件の計算例を示します。厚生労働省の「採用時に明示すべき労働条件」の案内では、労働契約の締結時に賃金や労働時間などを明示する必要があると説明されています。賃金の決定・計算・支払方法、締切り・支払時期を規程や労働条件通知書と一致させることはもちろん、社員が日々の成果と給与を結びつけて理解できる言葉へ直すことが大切です。
2.反響の配分に量と質の偏りがある
Web、電話、来店から得た反響が一部の営業へ集中し、新人には連絡がつきにくい案件や成約可能性の低い案件だけが回る状態で、同じ売上目標を求めても公平ではありません。店舗や担当エリアで反響数が異なるのに、結果だけを横並びにする場合も同じです。
順番制、エリア制、勤務シフト、担当上限など、基本の配分方法を明文化します。そのうえで、担当件数だけではなく、連絡が取れた割合、希望時期、来店・内見への移行、重複や対象外の有無を定期的に確認します。公平とは全員へ同じ件数を渡すことだけではなく、目標を達成する営業機会に極端な差がない状態です。
3.入社直後から結果を求め、教育を省いている
物件知識、エリア知識、接客、案内、申込手続きを十分に教えないまま、一人で顧客対応を任せると、新人は失敗を避けるために動けなくなります。質問に対して「見て覚える」「自分で調べる」と返され、相談相手も決まっていなければ、成長の遅れまで本人の責任になります。
入社後30日、60日、90日で習得する内容を分け、独り立ちの条件を決めます。たとえば30日までは物件・エリア・社内システムと接客同席、60日までは初動連絡・追客・内見と申込補助、90日までは確認を受けながら一連の案件を担当する、といった段階です。これは一例であり、店舗の業務や経験の有無に合わせて調整します。
初期段階は売上だけでなく、初動時間、追客記録、案内準備、申込処理の正確さ、知識テスト、相談の適切さも評価します。売上目標を免除するか否かではなく、売上をつくる前提となる業務習得が評価される期間を設ける考え方です。
4.求人広告と実際の仕事内容が違う
求人広告では接客と内見が中心に見えても、実際は物件情報の入力、写真撮影、空室確認、電話対応、長期追客、申込や契約の調整、鍵の準備など、表から見えにくい業務があります。「未経験でも稼げる」「反響営業」という言葉だけで応募を促すほど、入社前の期待と現実の差が大きくなります。
1日の流れ、担当業務、接客以外の作業、繁忙期の変化、反響配分、報酬計算、休日の取り方を具体的に記載します。厚生労働省は「労働者の募集広告の表示について」で、募集情報に虚偽または誤解を生じさせる表示をしてはならず、募集主、業務内容、就業場所、賃金などの表示が必要だと案内しています。魅力を弱めるためではなく、納得して入社できる材料を増やすために実態を見せましょう。
| 抽象的な求人表現 | 入社後とのギャップを減らす改善例 |
|---|---|
| 反響営業なので飛び込みはありません | 会社が獲得したWeb・電話・来店反響を、原則順番制で配分。入社後は同席とロールプレイを経て担当を開始します |
| 未経験でも高収入を目指せます | 固定給、支給開始基準、歩合の対象額・率・支給月を示し、入社後3か月は業務習得と行動項目も評価します |
| 接客や物件案内をお任せします | 問い合わせ対応、物件提案、内見、追客、申込調整に加え、物件入力・写真撮影・電話対応も担当します |
| 頑張りを正当に評価します | 売上を主指標とし、初動、追客、案内、申込処理、顧客対応を補助指標として月次面談で確認します |
| 丁寧な研修があります | 30日・60日・90日の習得項目、同行者、質問先、独り立ちの確認方法を明示します |
5.繁忙期の負担が一部の社員へ集中する
問い合わせ、内見、申込、契約準備が同時に重なると、売上を上げる社員ほど事務処理も増えます。休憩や休日を取りにくく、帰宅後も顧客連絡が続く状態では、インセンティブが増えても長く働けません。個人の段取り力だけで吸収させると、忙しい社員から疲弊します。
営業本人でなければできない提案・内見・交渉と、入力、写真整理、書類準備、定型連絡など分担できる作業を分けます。テンプレート、チェックリスト、予約枠、案件管理のルールを整え、繁忙期だけ応急的に人を増やすのではなく、年間の反響予測と休暇取得を踏まえて配置を見直します。
6.売上以外の努力が評価されない
賃貸営業の最終成果は売上であり、評価の中心から外す必要はありません。ただし、会社が与える反響数や案件の難易度に差がある状態で結果だけを比較すると、成約までの行動が見えません。追客、丁寧な顧客対応、物件知識の習得、クレーム予防、後輩への協力も、店舗の成果を支えています。
売上評価を中心に残しながら、初動率、案内率、申込率、記録の正確さ、顧客対応、チーム支援を補助的に確認します。項目を増やしすぎると評価が複雑になるため、課題に直結する少数へ絞り、誰が見ても同じ判断になる基準を付けます。補助評価は売上不足を無条件に埋めるものではなく、改善すべき段階を見つけるための指標です。
7.上司の進捗確認が「詰める場」になっている
数字が足りない理由を確かめず、本人の努力不足と決めつけると、社員は悪い情報を隠すようになります。売上会議で強く叱られる、質問すると評価が下がる、相談しても目標だけを言い渡される状態では、退職の意思が固まるまで問題が表に出ません。
定期面談では、売上だけでなく、反響数、連絡率、案内数、案内率、申込数、申込率を順番に確認します。反響が少ないのか、初動が遅いのか、ヒアリングや提案で止まるのか、申込後の辞退が多いのかを一緒に整理し、次の期間に変える行動を一つか二つ決めます。進捗確認を責任追及ではなく改善相談へ変えることで、成果が出ない期間の小さな変化を早く把握できます。
8.将来の収入とキャリアが見えない
今の固定給と歩合は分かっても、数年後にどのような働き方や収入を選べるかが見えなければ、長く在籍する理由を持ちにくくなります。営業を続ける以外の道がない会社では、接客が好きでも、体力や生活の変化を考えて退職を選ぶことがあります。
自社に実際に用意できる範囲で、主任、店長、教育担当、契約・管理業務、複数店舗の支援などの役割を示します。役職名だけでなく、必要な経験、評価項目、担当する仕事、報酬の考え方を説明します。存在しない昇格事例を作る必要はありません。現時点で制度化されていないなら、どの役割を今後整備できるかを社内で決めてから求人や面談で伝えます。
賃貸営業の定着状況を確認する月次チェック
- 一人当たりの反響数と、連絡可能・内見見込みなど反響の質に偏りがないか
- 案内率、申込率、成約率のどこで停滞しているか
- 基準直前でインセンティブ0円の社員が何人、何か月続いているか
- 新人へ既存社員と同じ基準を課していないか
- 繁忙期と閑散期で、達成可能性が大きく変わっていないか
- 給与計算を社員本人が再現できる説明になっているか
- 30日・60日・90日の教育が予定どおり実施されているか
- 残業、休憩、休日、案件数が一部の社員へ集中していないか
- 求人広告、面接時の説明、現場運用に違いがないか
- 面談が原因分析と支援の場になっているか
RELIKE RECRUIT
RELIKE RECRUITでは、自社でも不動産事業を行う視点を生かし、不動産・建築業界に特化した採用支援を行っています。採用課題に応じて、次のメニューを組み合わせてご提案します。
- 求人広告掲載:仕事内容、評価制度、教育体制を整理し、経験者にも未経験者にも実態が伝わる求人原稿へ落とし込みます。
- 定額制 求人検索エンジン運用:初期費用を抑えた月額定額制で、継続的な運用と改善を行いながら採用活動を支援します。
- 採用サイト・求人LP制作:求人広告だけでは伝えきれない仕事の流れ、報酬、育成、働く環境を詳しく掲載し、応募の受け皿を制作します。
まとめ|採用を増やす前に賃貸営業が辞める原因を直す
賃貸営業がすぐ辞めるとき、最初に求人広告の掲載量を増やすのではなく、現在の社員が辞める原因を確認する必要があります。インセンティブの支給開始基準が高すぎる、計算方法が不明確、反響配分が偏る、教育前から結果を求める、繁忙期の負担が集中する状態を残したままでは、採用人数が増えても同じ理由で退職が続きます。
高い目標を置けば売上が伸びるとは限りません。通常の努力では届かない基準を全員へ課し、基準未満をすべて0円にすれば、社員は努力と報酬のつながりを失います。一方で、基準を安易に下げて利益を圧迫すれば、会社も制度を続けられません。反響数、案内率、申込率、成約率、平均売上を確認し、新人と既存社員、繁忙期と閑散期の違いを踏まえて、段階的な報酬を設計することが重要です。
賃貸営業を定着させるとは、簡単に稼げる会社へ変えることではありません。「どの営業機会が与えられ、何をどこまで頑張れば、どのように評価され、いくら収入が増えるのか」を社員が理解できる環境をつくることです。そこへ、30日・60日・90日の教育、相談できる上司、実態に合う求人情報、繁忙期の業務分担、将来のキャリアをつなげます。
採用と退職を繰り返す状態では、求人広告へ費用をかけ続けても根本解決になりません。まず既存社員と退職者の事実を数字で振り返り、制度と現場運用のずれを一つずつ直す。そのうえで、改善した仕事内容、稼ぎ方、評価、教育を求人広告で具体的に伝えることが、次に採用する賃貸営業の応募と定着の両方につながります。