家を売った後に「修理して」と言われたら?売主の責任の話

家を売り終えた後に、買主から修理を求められたらどうすればよいのでしょうか。請求されたからといって、すべてを負担すると決まるわけではありません。連絡を受けたときの対応と、契約前に決めたい責任の範囲、不具合の伝え方を整理します。
制度や契約条件は変わることがあるため、実際の売却時に改めて確認してください。
修理の連絡が来ても、まず事実と契約を確認する
売った家の買主から「雨漏りがあるので修理してほしい」と連絡が来たら、驚くと思います。ですが、連絡が来たことだけで、売主がすべての費用を負担すると決まるわけではありません。まず事実と契約内容を確認してから、対応を決めます。
反対に、「もう売った家だから関係ない」と取り合わないのも避けたいところです。契約で約束した状態と、引き渡した家の状態が違っていた場合には、売主に責任が生じることがあります。これを「契約不適合責任」といいます。
その場で支払いを約束せず、内容を記録する
最初の連絡では、どこに、いつから、どのような不具合があるのかを聞き、写真や動画、点検結果があれば共有してもらいます。すでに修理を依頼した場合は、工事の内容と見積りも確認します。
「ご不便をおかけしている状況は分かりました。契約内容と現地の状態を確認したうえで返答します」と、受け止めることと費用を引き受けることを分けて伝えると、話を進めやすくなります。対応を放置するのではなく、確認の担当者と次に連絡する時期を決めましょう。
漏水などで被害が広がるおそれがある場合は、安全確保や必要な応急措置を優先し、仲介担当者や専門家と連絡を取ります。可能な範囲で修理前の写真や作業内容を残してもらい、最終的に誰がどこまで費用を負担するかは別に確認します。

「壊れた」だけでなく、いつ・なぜ起きたかを見る
例えば、引渡し後に初めて雨漏りに気づいたとしても、原因が引渡し前からあったのか、その後の工事や災害などによるものかで事情は変わります。発見した日だけで原因や責任は決められません。
また、古い設備に通常の使用感があることと、「正常に使える」と約束した設備が使えないことも、同じではありません。東京都住宅政策本部の引渡し後の不具合についての案内も、契約内容と引渡し時の状態を確認する考え方を説明しています。
売買契約書、物件の状態を伝えた告知書、設備表、補修記録などをそろえ、仲介担当者へ共有します。原因が分からない場合は建築の専門家に、責任や請求の範囲で意見が分かれる場合は弁護士に確認しましょう。
POINT
修理の連絡には対応しつつ、費用負担を即答せず、事実・原因・契約で決めた内容を確認しましょう。
契約前に、売主が負う責任の範囲を決めておく
売却後の負担を見通せるようにするには、売買契約を結ぶ前の取り決めが大切です。「中古だから全部自己責任」「売主だから何でも直す」という曖昧な理解のまま進めないようにしましょう。
特に個人が事業としてではなく自宅を売る場合には、買主との合意によって、責任を負う対象や期間などを調整できる場合があります。売主が何を、いつまで、どのように対応するかを、契約書で具体的に確認します。
| 確認する点 | 曖昧にしない内容 |
|---|---|
| 対象 | 建物のどの部分か、設備は含むか、除くものは何か |
| 期間 | いつを起点に、何をいつまでに通知する約束か |
| 対応方法 | 調査・修理の手順、費用負担、ほかの請求の扱い |
例えば、建物の責任と付帯設備の取り扱いが別々の条項に書かれていれば、片方を読むだけでは判断できません。「設備は現状のまま渡す」という説明が、契約書や設備表のどの記載に当たるのかも確認してください。
なお、「現状有姿」「現状渡し」という言葉だけで、契約不適合責任がすべて免除されるわけではありません。現状のまま引き渡すことと、責任を免除することは分けて確認しましょう。
免責や期間を決めても、すべてが有効とは限らない
売主が責任を負わない旨の特約を「免責特約」といいます。ただし、その一文があれば何があっても負担しない、というものではありません。民法572条では、知りながら告げなかった事実などについては責任を免れないとされています。
取り決めの考え方は、東京都の契約不適合責任の解説資料でも確認できます。売主・買主の立場によって適用される法律が違うため、別の取引で使った特約をそのまま移さないでください。
不動産会社自身が売主となり、宅建業者ではない買主へ売る場合は、責任を免除したり、不具合を知らせる期間を短くしたりする取り決めに法律上の制限があります。個人が自宅を売るときと同じ条件を、そのまま使えるわけではありません。
宅建業者以外でも、事業者が消費者に売る契約では消費者契約法の確認が必要です。個人の名前で売る場合でも、事業として行う取引かどうかで扱いが変わり得ます。通常の自宅売却と事業者の販売を混同しないよう、担当者や弁護士に自分の取引に合う条件を確認しましょう。
修理、代金の減額、損害賠償、契約解除は、それぞれ認められる条件が違います。買主が希望した方法や金額がすべてそのまま通るわけではありません。売主側も、責任の範囲を理解しないまま「一般的な契約です」と受け入れず、条項ごとに説明を求めてよいのです。
POINT
責任の対象・期間・対応方法を契約前に確認します。免責特約の効力は、告知内容や売主・買主の立場でも変わります。
知っている不具合と、買主との合意を書面に残す
売主を守るために欠かせないのが、知っている不具合や補修歴を具体的に伝えることです。売れにくくなるのが心配で黙っていると、引渡し後のトラブルを大きくするおそれがあります。
例えば、以前に天井から水が落ちたことがあるなら、「雨漏りあり」とだけ書くより、いつ、どの場所で起き、どんな工事をしたかを整理します。工事の請求書や写真が残っていれば、担当者へ渡しておきましょう。
工事後に自分が気づく範囲で再発していないことと、原因まで完全に解決したと確認できていることは違います。把握している事実を伝え、専門家の確認がないことまで「直っているので問題ありません」と言い切らないようにします。
分からないことは、分からないと伝える
相続した家などで居住経験がない場合、設備の調子や過去の不具合を知らないこともあります。その場合は、知らないのに「なし」と埋めず、誰が、どの期間住んでいたか、自分が確認できている範囲を説明します。
ただし、「分からない」と記載すれば責任がすべてなくなるわけではありません。家族が持っている補修記録など、確認できる情報を集め、必要な調査をするか、現状をどう契約へ反映するかを相談します。
設備は、引き継ぐものと撤去するものを一覧にし、分かる範囲で作動状況や不具合を記録します。引渡し直前に故障が分かった場合も、黙って渡さず担当者へ伝え、修理するか、買主と別の取り決めをするかを整理してください。

説明した内容を、契約書類にも残す
口頭で話しただけでは、後から「聞いていない」「違う意味で受け取った」という行き違いが起こり得ます。告知書や設備表へ記載し、契約上どの状態で引き渡すことに合意したかを確認します。
ただ情報を渡しただけで、あらゆる責任が消えるわけではありません。買主が了承した範囲と、売主が引き続き負う範囲を、矛盾なく書面へまとめることが必要です。写真や書類、担当者とのやり取りは、引渡しが終わった後も保管しておきましょう。
状態を正直に伝え、負担する範囲を決めておく。それは買主への説明であると同時に、売主が必要以上の負担を引き受けないための準備にもなります。
POINT
把握している状態を具体的に伝え、買主との合意を契約書類へ残すことが、売却後の行き違いを減らします。
まとめ|売った後の責任まで、納得して契約する
家を売った後に修理を求められても、すぐに全額負担すると約束する必要はありません。連絡内容を記録し、契約書と告知書、現地の状況を確認して、対応を決めましょう。
これから売る人は、契約前に責任の対象、期間、対応方法を確認してください。条件が曖昧なまま署名するより、分からない条項を一つずつ説明してもらうことが大切です。
仲介会社を選ぶときも、査定額や販売力だけでなく、売主の負担をどこまで確認してくれるかを見たいところです。契約書案を事前に渡し、「この設備が壊れたらどうなるか」などの具体例で、責任の範囲を説明してくれるかを確かめましょう。
買主からの希望条件をそのまま受け入れるよう勧めるのではなく、売主が負う費用や対応の重さも整理し、必要なら条件を調整する。そのように売主の立場も踏まえて話を進める担当者を選ぶことが大切です。
大手だから安心、小さな会社だから不安、と規模だけでは決まりません。分からない条項への質問に答え、売主が引き受ける責任と、その理由を説明してくれるか。実際の対応の中身で判断してください。
価格だけでなく、売った後の責任まで納得して契約する。不具合を隠さず、どこまで引き受けるかを適切に決めることが、安心して売却を終えるための備えになります。
POINT
売却後の責任は、契約前の確認から備えます。請求を受けた際は、一人で判断せず、資料をそろえて専門家と確認しましょう。